優しい嘘はいらない
そんな私に極上の笑みを浮かべた。
店員が席を離れた隙に
「本当にいいの?」
「あぁ、予定が狂ったが買うつもりだったし、それでお前が不安にならないなら安いものだ」
安くないよ…
ブランドモノだよ。
これ1つで0がいくつつくのよ
と、叫びたい心境なのに彼は終始ご機嫌。
やっと場違いなお店を出て肩の力が抜けると、お腹の空いた音が盛大になった。
プッとお互いに吹き出し、彼はリングをつけた右手で私の頭を撫でた。
「腹減ったな?」
「うん…朝から何も食べてないんだもん」
「だなぁ…コンフォルトでも行くか?」
頷いた私の右手を取り、満足そうにリングを撫でると指を絡めて繋いできた。
「はずすなよ」
「もちろん‥五十嵐さんもはずさないでよね」
ふふふと笑い合ってコンフォルトへ向かった。
重曹の扉を開けお店に入って行くと、オーナーとカウンターの中に一緒にいる女性は、昨日、見た女性だった。
その女性が目ざとくリングに気付き微笑んでいる。
「ほら、私の言った通りになったでしょう」
マスターは悔しそうな表情を浮かべ私達にカウンターに座るように顎で指図して
「恭平、お前も見かけによらず独占欲強かったのな」