優しい嘘はいらない

「そうみたいです」

「俺からの奢りだ」

そう言って悔しそうにグラスビールが2つ差し出された。

「「ありがとうございます」」

マスターの後ろでうふふと笑う女性が気になっていると、私の視線に気づいた女性は自己紹介をしてくれた。

「初めまして、この人の妻の美鈴です。よろしくね」

「…‥は、初めまして向井 杏奈です」

「杏奈ちゃんっていうのね。噂には聞いていたけどかわいいじゃない」

バシッと五十嵐さんの肩を叩く美鈴は、不機嫌になる五十嵐さんを無視して喋り続けた。

「‥恭平君がぞっこんなのもわかるわ。そのリング虫除けのつもりらしいけど、こんな独占欲強い男で杏奈ちゃん大丈夫?」

「大丈夫ってなんなんですか?大輔さんの方が独占欲強かったじゃないですか?そんな人に捕まった人に言われたくない」

「おい、恭平…出禁にしようか?」

身を乗り出し抗議していた五十嵐さんはムスッとしてメニューを見だし、勝ち誇ったマスター。

そんな2人に笑っていると、実は大学の先輩、後輩だということを美鈴が教えてくれた。

そして…
「私があそこの店員と知り合いだからって連れて行かれて、指輪も女性目線から幾つか選んでくれって言われたのよ」

と美鈴さんからの暴露に五十嵐さんが真っ赤になっていく。
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