優しい嘘はいらない
「不安にさせて悪かったな」
涙ぐむ私は、彼の胸の中で首を横に振っていた。
そんな私の頭部をポンポンと撫でぎゅっと抱きしめてくれる。
それだけで、色々悩んでいた事が吹き飛んでいくから不思議だ。
「デートできなくてもいい…一緒にいてくれるだけでいいの。朝起きたら五十嵐さんがいない方がイヤだよ」
「…ずっと、一緒だ‥デートもするからそんな顔するな」
頬を濡らす涙を指先で拭い、両頬に指がかかり口角をぶにゅっと持ち上げるように挟まれる。
「ほら、嬉しいだろう⁈素直に喜べ…」
「…そんなことされて喜べるわけないじゃん。痛いから離してよ」
手を振り払い彼なりの照れ隠しに、嬉しい気持ちを素直にできなくて反抗的な態度をとっていた。
「あつ、それが彼氏に対する態度か?」
「そっちこそ彼女にすること?また、ガキ扱いしてるじゃん」
目を細め威圧的な表情に口を尖らせ睨み返した。
すると、頭部を押さえられ唇にキスされたと思ったら下唇を喰まれ、開いた唇の隙間に彼の舌が強引に入ってきて淫らに絡めてきた。
「…んっ…ぁ…はぁ…ん…」
唇を離した男は意味深に笑っていた。
「ガキとはこんなキスしないけど…」