優しい嘘はいらない
Contact 6.5 (すれ違った心)
気持ちよく感じてしまったキスに、頬を上気させ言い返す言葉も出てこないで、もう、こんな場所でと恨めしげに睨むしかできなかった。
「これ食ったら帰れよ」
テーブルにゴトンと置かれたドリアが2つ。
マスターは眉間をピクピクしながら微笑んでいた。
『俺の店を何だと思ってるんだ。どいつもこいつも…』
ブツブツと文句を言い頭をかいて戻って行く。
「…バカ、マスターに見られてたじゃん。もう、恥ずかしくてこれないよ」
真っ赤になった頬は、なかなか熱を冷ましてくれない。
「気にするな…」
そう言ってドリアにスプーンを差して食べ始める五十嵐さんの表情は澄まし顔。
もう、そっちはいいかもしれないけど…
…気にするなって何?気にするわよ。
「来週、来るのに…」
「……来週?来週っていつだ?三連休か?誰と来るんだ?」
ムッとしだした五十嵐さんにたじろぎ、慌てて説明しだした。
「はっ、クリスマスの三連休の初日に結婚式に二次会も参加だ⁈そんなの出席しないで俺といろ。俺たちの初めてのクリスマスだぞ」
「そんなこと言っても、前から決まってた事だし会社の人の結婚式だから欠席できない」