優しい嘘はいらない
「なんでもっと早く言わないんだ?」
「言うような関係じゃなかったもん」
「抱いたんだから言えよ」
「セフレだと思ってたのに言えるわけないじゃん」
「お前みたいな面倒な女をセフレで何度も抱くかよ」
「…面倒って何よ」
カチンと頭にきた私は立ち上がり彼を睨む。
「だから、そうやってすぐ怒るとこだよ」
面倒くさそうにタバコを取り出すと口に咥え火をつけようとしていた。
「面倒で悪かったわね。結婚式にも出席するし、二次会も参加するから五十嵐さんは面倒な女なんか放って楽しく過ごせば?」
五十嵐さんの口からタバコをむしり取り、手のひらで握りつぶして彼目掛けて投げつけると彼は顔をしかめた。
「好きにしろ。俺も勝手にする」
よく知っている冷たい目に、怒りに任せたことを後悔した。
だけど、引き止める素ぶりも見せない彼の前で後戻りできない私は彼を置いてお店を出てしまった。
その日から五十嵐さんとは一切連絡をとっていない。
薬指の指輪を見つめていても、溜息と後悔しか出てこなかった。
もらった時はあんなに嬉しいかったのに…
もう、私達ダメなのかな?
電話をかける勇気もなくて、時間だけが過ぎて行く。