優しい嘘はいらない
「ずるいと言われても‥偶然向井さんに会った時に挨拶してたら、彼氏が嫉妬丸出しで威圧してきただけですよ」
山城さんが悪気もなく事の経緯を説明している姿にイラっとくるのは、今の私は荒んでいるから?
「あら、その現場に私も居たかったわ…向井さんを取り合う男同士。三角関係かしら」
風見さんが想像力を膨らませている。
「俺、嫁一筋ですから誤解招く言い方やめてくださいよ」
和かに笑っている山城さんだけど、目が怖いですよ。
隣の奥さんに違うからねと必死にアピール中…の山城さんを無視して興味津々丸出しの風見さんの口はとまらない。
「で、山城君から見て向井さんの彼氏はイケメンなの?」
「…俺から見てもいい男でしたよ。溝口さんみたいなチャラい感じじゃなく硬派な感じですかね。目力が鋭かったですよ」
はーっと溜息まじりに五十嵐さんの顔を思い出して説明している山城さんと目が合ってしまった。
「この後彼氏とデート?」
「‥いいえ、二次会に参加するので予定してないです」
「えっ、二次会なんて参加しないで彼氏と過ごしなよ。まさか、今日の事で彼氏とケンカでもした?」
私の曇った表情を見た山城さんの奥さんは、山城さんを怒っていた。