優しい嘘はいらない

無神経だとか、いつまで経っても女心がわからないとか言われ奥さんに頭があがらない様子の山城さんの姿が可笑しくて笑ってしまう。

「旦那さんを怒らないであげてください。ここにいるのは自分で決めた事ですし、二次会も参加するって彼にも宣言してきましたから大丈夫です」

せっかくのお祝いの席を私のせいで空気を悪くしたくなくて、おちゃらけて両手でガッツポーズをしてみせた。

「強がってない?」

「‥はい」

「そう…それなら二次会も一緒に溝口さんを冷やかしてやろうな。ほら、あの人のデレっぷり見てみろよ」

山城さんが指指した向こうでは、溝口さんと奥さんが各テーブルを回ってヤンヤヤンヤと冷やかしにあっている最中で、私達のテーブルに来た時にも山城さん達からのあたたかい冷やかしに幸せそうに笑う溝口さん夫婦を微笑ましく思っていた。

素敵な披露宴も終わりふと、脳裏に浮かぶのはやっぱり五十嵐さんのこと。

今頃、どうしているかな?

まだ、怒っているのかな?

二次会が終わったら彼のマンションに寄ってみようかな?

それとも、電話してみようかな?

でも、冷たい態度を取られたら立ち直れないかも‥

そんなことを考えながら二次会会場のコンフォルトに来ていた。
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