優しい嘘はいらない

うわっ‥

思わず志乃と佐藤さんを重ねてしまい、身近にもチャラ男がいたわと思い出し、志乃と佐藤さんはクリスマスを一緒に過ごすのだろうかと心配してしまった。

自分のことで一杯一杯で、志乃と連絡を取る余裕もなかったなぁと反省し、良くも悪くもどうなるのかわからないけど、五十嵐さんとのことが解決したら連絡をとってみようかなと思っていると、山城さん夫婦が、本日の主役と雑談するために輪の中から抜けてしまい気がつくと合コンのようにいくつかのグループに別れてしまっていた。

私は、そっと輪の中から抜け出し1人カウンターに向かう。

すると、マスターが忙しく手を動かしながら微笑み話かけてきた。

「今日は、杏奈ちゃんが二次会にいるとは思わなかったよ。恭平がよく許したね?」

「…いえ、この間ここでそのことでケンカしたきり連絡とってないんです」

「ヘェ〜、てっきり待ち合わせでもしてるのかと思っていたよ」

そう言い、顔だけで扉の横にある窓を指して苦笑いするオーナーが指した窓を見ると、窓の向こうには寒そうに肩を縮め上着のポケットに片手を突っ込み、タバコを吸っている人がいた。

うそ…

あまりの嬉しさに頬が緩んでいく。
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