優しい嘘はいらない
『そんな落ち込んだ顔してやけ酒か?例の彼女に振られたか?』
椅子に座るなり、この店のオーナーである大輔さんから手厳しい歓迎にあうと、すかさず反応を示したのは、大輔さんの嫁の美鈴だった。
『えっ、女の子に冷たい態度しか取れないあの恭平君に好きな子ができたの?』
『できたら悪いか⁈』
よかったねと笑っているが、失礼な事を言っていったと自覚がないようだ。
旦那が旦那なら嫁も嫁だ…
『やっぱ、帰るわ』
『えっ、なんでよ。相談にのるよ?』
『…そいつの事だから、クリスマスに彼女の前でカッコつけようと、取れもしないホテルやレストランでも考えて…それのアテが外れたってとこだろう⁈』
ニヤッと笑う大輔さんにズバリ言い当てられる。
『女はそんなこと気にしないよ。好きな人と一緒に過ごせるならどこだっていいと思う。そんなことにお金使うならクリスマスプレゼントを豪華にしてあげたら?』
『指輪をプレゼントするつもりなんだけど、買った事なんてないから女の好みなんてわかんないんだよな』
『私の知り合い、©️の宝石店にいるけど紹介しようか?』
超、有名ブランドじゃん。
俺はその話に飛びつき、美鈴の両手をとった。
『今日、この後上がりだよな?一緒に来て選んでくれよ』