優しい嘘はいらない
俺の方に気持ちがないから結局は、長続きしない。
俺も男だ。
性欲はある。
だから、その時はその場限りで後腐れのない女で満足していた。
だが、今日はそんな気分じゃない。
「悪いけど、君たちの性欲処理に付き合えない」
女達は、真っ赤になって怒りだしてでていった。
そのつもりで声をかけてきたんだろう?
こっちは、悪いけど…って前置きしてるのになんで怒るのか理解できない。
マスターに客を逃した事を詫びると苦笑いしている。
俺の方が常客だろうから何も言わないのだろうが、視線が痛い。
もっと、うまくあしらえと言っているようで、つい優也を探すふりをして顔を背けた。
ふと、視線に入る1人の女。
どこかで見た記憶…が。
優也を見つければ、女と立ち話中。
あの女もどこかで…
すると、最初に見た記憶のある女に手を振る女に、あっ…通勤電車の中の高校生だった女だと思い出した。
いつも、俺を遠巻きに見つめていた女。
この女も、俺のうわべに顔を赤くしていた1人だと記憶が蘇ってきた。
顔も覚えている女なんて少ないのに、記憶に残るぐらい印象的だったかと自分の記憶力になぜか口元が緩んでいた。