優しい嘘はいらない

意地悪な彼の後を追って浴室に行けば、すでに全裸の彼がシャワーを片手に待ち構えていた。

「ほら、洗ってやるから来いよ」

「…イヤ、むり、むり…‥自分で洗えるから」

裸のまま後ずさりして半笑いしても、彼は洗う気満々で私にシャワーをかけてきた。

「ちょっと‥何するの」

「逃げるのが悪い。他の男の匂いをつけたままのお前を抱けるかっての…来いよ」

拗ねた口調で来いと人差し指だけを動かす。

なんだ〜
これはヤキモチなのか?

それなら私だって同じだ。

「私だって、あの人達の香りがついてる五十嵐さんに抱かれたくないわよ」

「ヤキモチか?」

「…そうよ。悪い?」

不敵な笑みを浮かべていた五十嵐さんの顔が赤らんでいく。

「……めんどくさい女」

ぶっきらぼうに言いシャワーヘッドを壁にかけた彼は、私をシャワーの下に引っ張りお互いが頭からお湯を浴びる位置に立たせた。

めんどくさいと言われ、また傷ついている濡れた私の頬を彼の手のひらが撫でていく。

「でも、こんなかわいいヤキモチならいいかもな」

照れ臭そうに私の頬をつねると

「それに俺にヤキモチ焼かせるなんて…いい度胸だよな」
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