優しい嘘はいらない

なんとなく身の危険を感じて逃げようとしたら、腰を掴まれて逃げれない。

「試されてるのか?」

どう言う意味だ?

首を傾げた。

「わからないなら後で教えてやる。その前に髪を洗ってやるから動くなよ」

意味深な言葉とともに私の濡れた髪を洗い出す彼は、なぜか楽し気に笑っている。

その意味を理解し出したのは、お互いの体も洗い終わり露天風呂に入った後からだった。

ベッドで執拗なぐらい私の弱いところを攻めながらの言葉攻めは、羞恥心を煽るものばかりで耐えられない。

「そんな‥恥ずかしい事ばかり‥言わないで…」

「何言ってるんだ?聞こえない」

「…あっ…‥聞こえてる‥じゃない」

グイっと奥を突かれ瞼の奥がチカチカする。

「やっ‥」

「俺は他の女によそ見をする暇がないぐらい、こんなにお前に溺れてるのに…」

私の蒸気した頬を撫でて彼は艶かしく笑った。

「…私だって…五十嵐さん以外見えないもの」

「あぁ…知ってる。だけど、俺を振り回すお前が悪い
。だから、今日はお前にべた惚れだって教えてやってるんだけど…何が不満なんだ?」

ところどころ甘いセリフに私は毒されている。
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