優しい嘘はいらない
「見ないで…」
ギロッと睨むとハイハイと手を振り部屋の固定電話で食事を頼んでいて、その間に帯をしめていると、小さな冷蔵庫から冷たいお水の入ったペットボトルを渡してくれた。
喉がカラカラだったからほしいと思っていて、気の利く男にありがとうと微笑んだ。
「全く、怒ったり、笑ったり忙しい奴」
苦笑して私の頭を撫でた後、昨日着ていた散らばった衣服を彼はハンガーにかけ、下着類は鞄の中にしまってくれた。
しばらくして、運ばれてきた食事に舌鼓をうち満足して本日の食事は終了。
「あーぁ‥温泉旅館に来てるのにクリスマスイブの半分を寝て過ごすカップルってうちらだけだよ。きっと…」
私のぼやきを聞きながら、恭平は食後の一服中。
「どこか行きたかったか?」
「恭平と一緒ならどこでもいいんだけど…せっかく、恭平が連れて来てくれたのに、この部屋から出てないって気付いてる?」
「仕方ないだろう…お前、立てないんだから」
「もう、立てるわよ」
スッと立ち上がって、恭平の側まで歩いていく。
「へー、もう回復したのか⁈」
「そうよ。だから、せっかく出し館内巡りしよう?」
恭平の袖を引っ張るとめんどくさそうにしながらも、手を繋いで館内巡りに付き合ってくれた。