優しい嘘はいらない
志乃達と職場へのお土産選びは意外に楽しくて、夢中になって時間も過ぎるのを忘れていた。
その間、恭平は文句も言わず付き合ってくれて荷物持ちまでしてくれる。
ちょっとした優しさにキュンときて、彼の腕に抱きついてしまう。
「なんだよ」
「なんでもない」
うふふと笑い、買い物や館内巡りを終えて部屋に戻ってきたら、外で花火の打ち上がる音が…
部屋を暗くして、窓際から見える壮大な景色に見とれていると、背後からそっと抱きしめてくる腕。
「きれいだね」
「あぁ、来年も来ような…」
耳元で囁く声に、うんと頷いた。
その後は、志乃からのプレゼントは大活躍して、抑えの効かない野生動物は、憎たらしい表情で私を抱いたのだ。
でも手加減はしてくれたようで、次の日には響く事もなく中居さんと女将さんに見送られて旅館を後にしたのは、お昼を過ぎてから…
来た道を同じ時間をかけて私のアパート前までくると、なぜだかまだ離れがたくて車からなかなか降りれない。沈黙の中、彼も同じ気持ちなのか、握る手を離そうとしない。
しばらくして、キーケースからリボンを結んだ鍵を私の手のひらに…
「毎日俺の部屋に帰って来いよ」
言葉にならない嬉しさに涙が流れた。