優しい嘘はいらない
後は、渡すだけだが、タイミングが合わない。
どうせ渡すなら、クールに決めたいと思うのは男のミエなのだろうか?
旅館からの帰宅中も、渡すタイミングを考えているなんてダサすぎだろうか?
彼女のアパート前
離れがたくて彼女の手を握っていた俺は、とうとう勇気を出して彼女の手のひらに鍵を乗せた。
この鍵でいつでも遊びに来いよと言うつもりだった。
だけど、気持ちの変化なのか口から出た言葉は
「毎日、俺の部屋に帰って来いよ」
自分でも驚いていた。
そう思えるほど、彼女と一緒にいたいんだと改めて実感していたら、彼女の目から涙が流れる。
なんで泣くんだ?
「恭平のサプライズ多すぎい。指輪もくれるし、温泉にも連れて行ってくれたのに…いいの?」
「あぁ、ずっと一緒にいたいって思ってしまったんだからな…ここの部屋引き払ってすぐにでも引っ越して来い」
どこから出てくるのかわからない甘やかな俺の声に、抱きついてくる彼女は、上目遣いに呟いた。
「後悔しないでね」
「お前と過ごせない方が辛い」
彼女の唇の上を親指でなぞり、甘い雰囲気になった時、あっと叫んでスルリと逃げていく彼女。
「恭平へのクリスマスプレゼント取ってくるから待ってて…」