優しい嘘はいらない
慌ててタバコを消し、俺は階段を駆け上がり彼女から荷物を受け取り下まで降りる。
「荷物、これだけか?」
ありがとうと言いながら申し訳なさそうにする杏奈。
こんなことぐらい、なんともないのに‥
「彼氏らしいことさせてくれよ」
自分で言ったセリフなのに、なんだかむず痒い。
そして、なぜだか照れている杏奈がいて、いつものように俺らしくないと言いださない彼女に拍子抜けし、つい、からかってしまう。
「杏奈らしく文句がでないと調子が狂うんだけど…」
ムッとして唇を尖らせる杏奈。
「それが、彼女に言うセリフ?クリスマスプレゼントあげないから…」
やっぱり、あまのじゃくの彼女はこうでないと。
そんな杏奈が、俺の腕の中で可愛らしく淫らに変わる姿とのギャップがたまらないと思ってしまう俺は、おかしいだろうか?
そう思うほど、心底惚れている彼女に
「仕方ないだろう?そんなお前に惚れたんだ」
俺に気に入られようとするあざとい女と違い、最初から素の部分を出してきた杏奈。
そんな彼女だから、俺は惹かれた。
「…私は、嫌い」
頬を赤くして睨んできても意味がないとわからないらしい。
「俺と一緒にいたくないほど、嫌いなのか?」