優しい嘘はいらない
意地悪な質問に杏奈は慌てて左右に首を振り、
「違うの。……一緒にいたい」
少し素直になったけど、もうひと押し。
「でも、嫌いなんだろう?」
切なさを演技して、冷たい声で尋ねた。
こんな恥ずかしい駆け引きも杏奈だからできる。
「…‥す…き」
うつむき小さな声で恥ずかし気に呟く杏奈をぎゅっと抱きしめると、俺の腕の中から顔をだし潤んだ瞳でもう一度言う。
「恭平が…好きだよ」
この、ギャップがたまらないんだよな。
嫌われたと思い、必死になって俺に抱きつく彼女の頭を撫でてやる。
「わかってるから、泣くなよ」
今にも落ちそうな涙の粒を指先で拭いながら微笑んだ俺に、下唇を噛んで悔しげに言う。
「泣いてないからね」
まだ、あまのじゃくは健在らしい。
「素直じゃないの」
彼女の頬をつまんでやると
「こんな私が好きなんでしょう?」
「あぁ、そうだよ。そんなお前を可愛がりたくて仕方ない。たっぷり甘やかして可愛がってやるから一緒に部屋に帰ろうな」
艶めかしい声でそう言うと、彼女の手を繋いだ。
俺の意味深な返しに杏奈は、小さな声で甘やかに発狂する。
「嘘でしょ?」
意地悪く笑い彼女の頬にキスをした。