優しい嘘はいらない

無表情でブランデーを飲む五十嵐さんの腕を掴んで

『見た目で好きとか言わないでくれる。迷惑だから…それに、君、俺のタイプじゃないからとか酷くない?』

『ウワッ、恭平、お前そんな酷い事を女の子に言ってたの?』

ニヤニヤしながら悪ノリでからかう佐藤さんの足をテーブルの下で蹴りを入れた五十嵐さん。

イタイっと大袈裟に痛がり志乃に甘える
佐藤さんを志乃が嬉しそうにヨシヨシと今度は逆に慰める。

『恭平が…』

そんな2人を冷たい視線で瞬殺した私は、更に五十嵐さんに絡み出していた。

『好きだって言ってくれる人に、もっと優しくできなかったの?』

なんとか言いなさいよとグラスを持つ手を揺らしていた。

『俺の何も知らないで好きだって言うから、どこが好きなのか聞いただけだ…勝手に幻想を抱いて迷惑って言って何が悪い。それに、タイプの女ならとっくに口説いてる』

『ウワッ、サイテー。タイプなら口説くって…告白してきた子の事言えないじゃん。どうせあんたも顔でしょう⁈同類じゃん』

『違うね…表情とか仕草も含めて俺は最初からタイプだと言う。だから、必然的に好きになる』

私には理解できない屁理屈に言葉が出なかった。
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