優しい嘘はいらない

『好きでもタイプでもない奴に優しくするつもりはない』

『恭平はそう言う奴だよ。だから…杏奈ちゃん、恭平なんて好きになったらダメだよ』

苦笑しながら佐藤さんが私の気持ちを見透かしたように言うものだから…

『はっ、好きにならないわよ。顔は確かにカッコよくてタイプだけど、性格が悪い人なんて論外。私だけに優しくしてくれる人じゃないとダメなんだから…』

『……お前の事気に入ったのになぁ…でも、俺の事嫌いなんだ…残念。割とタイプだったのに口説く前に振られたの始めただよ』

意味深に色っぽく見つめてくる五十嵐さんに赤い顔が更にゆでダコのように真っ赤になっていた。

『……私は、嫌いよ』

そう言うのが精一杯だったらしく、その後無口になった私はビールを一気に飲んだ後、気持ち悪いとトイレに駆け込んだ。

ドアを全開にしてゲーゲーと吐く私を追いかけてきてくれた五十嵐さんがどう言う訳か背を撫でてくれて、落ち着いた私は帰ると言いだしたらしい。



「いい、ここまではわかった?」

「……はい」

「で、その後私を佐藤さんの餌食にできないとか言って連れて帰るって言いだして、仕方ないからみんなで帰る事になったの」
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