優しい嘘はいらない
朝、枕元で鳴り響く電話で目が覚めた。
画面を確認すると志乃からで、半分眠りから覚めない掠れた声で電話に出る。
「……もし、もし」
『杏奈?その声…まさか、隣に五十嵐さんい…「いないから」』
テンションの高い志乃のからかうような声にガバッと起きて全力で否定する。
『なぁーんだ』
何がなぁーんだよ。
残念そうに言わないでほしい。
だいいち、その声って何よ?
何を想像してたんだ?
そういえば、五十嵐さんの言葉にムカついて、その場に居たくなくて志乃の事置いてきてしまったんだ。
「……昨日は置いてってごめん」
『あっ、いいのいいの。おかげで佐藤さんと…うふふ』
何がうふふなんだ?
「朝からその笑い気持ち悪いんだけど…」
『うふっ…だって〜杏奈に聞いてほしいんだけど、今日の夜飲みに行こうよ』
「えー、また飲みに行くの?あんたと違って私にそんな余裕ないわ」
『なら、杏奈家でいい。今日の仕事帰りに寄るからお酒用意しておいてね』
チュッと鳴る電話口から沢山のハートが飛び出できそうな勢いに、電話を切ってしまった。
まぁ、いいかと枕元に置き、カーテンを開ければ、昨日の台風はどこへ行ったのか?空は青く雲ひとつ空だった。