優しい嘘はいらない
1日をダラダラと過ごし、夕方、志乃が来る前に買い物に行こうと大通りに出て近所のスーパーへ出かけた。
誰に会うでもないからと、スッピンに丈の長いロンTとホットパンツ。足元は夏が過ぎたのに履きやすいからとクロックスを履いていた。
片手はスマホでアプリゲームをしながら、もう片手は買い物袋を下げて歩いていたら、交差点で赤信号につかまる。
青に変わるまでの間、視線はスマホの画面に集中していたはずなのに、ふと何気なく顔を上げたら、反対車線に止まる一台の車の中の人物と視線が合ってしまった。
突然の事に手に持つスマホがスルリと離れ宙を舞う。
あっと、とっさに宙でワタワタとしながらキャッチして、見られたと頬を染め向こう側を見れば片方の口角をあげクスッと笑った人は、信号が青に変わった事で車を発進させ遠くへ行ってしまった。
まさかこんなところで…
しばらく、車が走った方向を見つめていた。
見つめたからといってあの車が戻ってくるわけでもないのに、何を期待しているのか⁈
もう、会うこともないと思っても、偶然とはいえほんの一瞬でも会ってしまうと心がときめいてしまう。
まるで高校生の頃に戻ったような感覚に
胸が苦しくなっていた。