優しい嘘はいらない
どうも本当に、会社の同僚と偶然会い挨拶していただけだと言う。
とんでもない感違いに、青ざめていく。
俺はなんて事を言ってしまったんだ⁈
「悪い…2人で呑んでくれ」
優也の顔も見ずに一言残し、彼女を追いかけたが怒ったままだ。
俺らしくない行動だとわかっているが、彼女が気になって仕方ない。
降り始めた雨が本降りになり、風も強くなっている。
すぐそこのコンビニで傘を急ぎ買い、走って追いかける。
その間も雨はひどくなっていき、傘を彼女にかざしても、素直に入る彼女じゃなかった。
傘なんて、山ほど残っていたが最後の1本だと嘘をついての2人きりの帰り道、謝るタイミングがわからなくて終始無言。
彼女も俺と口も聞きたくないのか無言を貫く。
結構、こたえる…
アパート前に、あっという間についてしまい、かける言葉を探していた。
その時、彼女からのお礼の言葉に頬が緩む。
口をきいてくれた事がこんなに嬉しいなんて…
余裕ぶる俺…
今、思い出すと内心はウキウキして浮かれていた。
引き締めていた表情が崩れる前に階段を駆け上がる彼女に背を向け歩きだすと、
気をつけて帰ってね…
それと、同時になぜか笑みが止まらなかった。