優しい嘘はいらない
わかってる癖に惚ける五十嵐さんをキッと睨んで
「私が酔って五十嵐さんに……その…迷惑かけた時のこと根に持ってわざと話ししてたんじゃないんですか?」
「あ、あれね…俺に迷惑をかけた張本人を見て思い出したんだから仕方ないだろう⁈まぁ、いい具合に出会いの再現に利用させてもらったからお前の迷惑行為及び暴言はチャラにしてやるよ」
私のおでこを指先で小突いた五十嵐さんは、楽しそうに笑っている。
小突かれたおでこをさすりながら口を尖らせ、文句の1つでも言わないと気が済まない。
「私を利用するなんて迷惑です」
プッと小馬鹿にしたように笑う五十嵐さんが、私の頭上を手のひらでガシガシと揺らす。
「迷惑って…誰もお前のこと知らないぜ」
「だって…」
「たまたま、作り話に思いついただけでお前に迷惑かけてないと思うけど…」
そうだけどさ…
なんとなく面白くない。
全部が作り話なんですか?
あなたの声は、愛しい彼女を思い出して話しているようでしたけど…
愛されている彼女が羨ましくて、話を最後まで聞きたくなくて逃げてきたのに、どうしてあなたはここにいるんですか?
「……迷惑かかってないけど、迷惑なんです」