優しい嘘はいらない
Contact 3.5 (ごまかせない思い)

開いた口が塞がらないというのはこういうことだろう…

後輩男性に口止めしておいて、これですか?

五十嵐さんの周囲が騒つくなか、私を鋭く睨む視線と意味深に視線を送ってくる男性に嫌気がさして

「彼女じゃありませんから…」

と、断言して五十嵐さんの表情も確認せずにその場を後にした。

会計を済ませた志乃達と合流するとカラオケに行くことになっていて、そんな気分じゃないとワガママも言えず滅入る気持ちのままテンションの高い彼女らに付き合う羽目になった。

楽しそうに歌う志乃達のテンションについていけない。

どうして私は、こんなに落ち込んでいるのだろう?

モヤモヤする。

突然、マイクを渡され流れ出した曲は失恋ソング

やだよ…とマイク手放そうとすると

「1人で歌うにはきついから、お願いつきあって…」

いつもと違い、何か思い悩んだ表情をする志乃。

そんな彼女の頼みを断れなくて一緒に歌う羽目になる。

なぜ、この曲を選択したの?

歌っている志乃のせつない声にどんどん感情移入していく。

「…………あいたい」

志乃の振り絞るような声に気づいてしまった。

彼女は、まだあの日の事を引きずっているんだと…
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