優しい嘘はいらない
「……うん。杏奈大好き」
私の体に抱きつく志乃を抱きしめ返してあげた。
近くのコンビニでアルコール類とスナック類を買い出し、2人で仲良くせつない歌を歌いながら歩いて帰ってきた。
側から見たら痛い奴らだろうが、そんなこと気にしてられない。
だって、志乃が1人でこの1カ月近く苦しんでいると思いもしないで連絡を取らなかったなんて、親友として情けない。
だから、これくらいの恥なんてたいしたことないんだから……
アパート前に人影が…
ウワッ…こわいわ。
1人じゃなくてよかったねと志乃と手をぎゅっと繋いで遠巻きにアパート前に近づくと…
「…帰ってきたか?」
いや、帰ってきたかじゃありません。
私の住んでいる場所だから帰ってくるのは当たり前。
ですが、なぜあなたがここにいる?
「いがらしさん⁈」
志乃の怪訝な声と表情は、私以上に怪しんでいた。
「2人で帰ってきたのならいいんだ。そっちの女、あんまりハメを外すすなよ。優也に連絡しておいた…明日、コンフォルトに来いってさ」
「はぁっ、何様?」
上から目線の言い方にカチンときたのは志乃だった。
「何様って俺様だよ。ガキのくせに男遊びしてんじゃねーぞ」