優しい嘘はいらない
小突かれたおでこを触る振りをして、好きな気持ちがバレないように顔を隠した。
「来週お前も来いよ」
「別に私が行かなくても志乃だけ行けばいいんじゃないの?」
「お前が来なきゃあの女来ないだろう?」
確かに…
志乃のことだから意地でも行かないか。
「わかったわよ。仕方ないから行ってあげる」
「あっ、なんだ⁈偉そうに…」
「私は、予定を変更してわざわざ行ってあげようとしてるのに‥なら、行かない」
意地悪くフンと顔を背けてみたが、私の顎をつかみ、背けた顔は五十嵐さんの顔の正面にもどされた。
クイッと顎を上げられ顎にかかる指の体温にドキドキする。
腰を少し屈めた五十嵐さんの顔が近寄ってくる間もドキドキする心臓は加速していく。
瞬きも忘れ、五十嵐さんの動向を見つめるしかできなかった。
「……くるよな⁈」
命令する声は、圧力をかけるような声色なのに、私にはその声が甘さを含んだ声色に聞こえるのは好きだからなのだろうか?
思わず、コクンと頷いてしまう。
すると、頭を撫でながらくしゃりと笑う彼の笑顔にときめくが…
まただ…
嬉しいはずなのに、子ども扱いされたようでモヤっとしてしまう。