優しい嘘はいらない
隣の席にいるのに背を向けられた時のなんとも言えない感情。
彼女の視線を独占している男に嫉妬する。
彼女が気になって、こちらの会話を適当に流して聞いていたら、突然、俺に話をふる女は俺に気があるらしく、隣に席を陣取りベタベタと触れてくる。
俺に彼女がいるのか気になるようで、質問してきたらしい。
チラッと見た視線の先の彼女にも聞こえたらしい。
フッ…聞こえているなら意識させてやる。
彼女がいると言えば、表情が曇りやけ酒のように一気にグラスの中身を飲み干す彼女…
肩を抱き寄せ、嘘だよと囁いたらお前はどうする?そんな空想を思い描きながら話は進んでいく。
どんな彼女なのかとしつこく知りたがる女は、立候補したいとバカな事を言い出す。
だが、その言葉に彼女がやっとこちらを見た。
視線が合い、切ないような表情をする彼女を愛しく思ってしまう。
試してみるか⁈
邪な考えが俺の中に芽生える。
彼女との出会い話を思い出し、頬が緩んでいく。
彼女は…まるで猫だよな。
そう思いながら話を進めていくと、彼女も誰のことかわかったらしくこちらを見て不機嫌顔。
そんな表情も愛しく、俺は彼女の話をしているうちに確信してしまった。