優しい嘘はいらない
背後の男達の視線に気づかなかったくせに、彼らを見つめる女性達の視線には気づいて牽制するなんて、さっきまで不安がっていた人とは思えない。
別に私がいなくてもよかったんじゃないのかな?
なんて、心の隅に思い描くけど…彼らが当たり前のように私達の隣に座ると私は一気に何も考えられなくなっていた。
そんな私と違い志乃は余裕の笑みを浮かべて話しかける。
「佐藤さん、お久しぶりです」
そんな志乃の肩を抱き寄せた佐藤さんは、志乃の頭部にチュッとキスをしだし余裕の笑みを浮かべていた志乃も、佐藤さんの突然の行動にはさすがに動揺している様子。
真っ赤になって、あたふたと佐藤さんの腕の中で逃げようと暴れているのだから…
そんな彼女に
「志乃…暴れないの。逃すつもりないからおとなしく俺の腕の中にいて」
甘い声で優しく囁く佐藤さんに、志乃は抵抗する気力を失ったようだ。
真っ赤になっておとなしくなった彼女の頭を撫でた佐藤さんは、やっとこちらに視線を向けてきた。
「杏奈ちゃん、久しぶり。元気そうだね」
「…お久しぶりです」
視線の先は志乃に向けながらペコっと頭だけを下げた。