優しい嘘はいらない
予想だにしなかった佐藤さんの行動にまだ戸惑っている志乃は、私に視線だけで訴えかけてくる。
(どういうことだと思う?)
みたいな感じで、佐藤さんの腕の中で緊張している。
しばらくして五十嵐さんが、やっと口を開いた。
「優也、そんなに独占欲見せつけて牽制しなくても誰も取ったりしないぞ」
苦笑いの五十嵐さん。
「取られるつもりなんてないけど…油断していると俺以外の奴のとこに行きそうだからね。志乃にはちゃんと教えておかないと…志乃は誰のものかって後でたっぷり思い出させてあげるよ」
艶かしく志乃を見つめ毛先を弄びながら、スーッと指先で顎のラインを撫で微笑んでいる。
ピクッと反応した志乃は、瞳を潤ませ首すじまで真っ赤になっていく。
目の前の光景にこちらが恥ずかしくなるほど、溺愛してる雰囲気に呆れた声で五十嵐さんはつぶやく。
「お前ってそんな男だったか?」
「そうみたい。恭平も負けてないと思うけどね」
2人にしかわからない会話に首を傾げる私。
「…ガキにはまだ早い話だよ」
意地の悪い笑みを浮かべる五十嵐さんに、また子供扱いされたと憤慨する私は
「そうみたい。ガキの私は大人の会話に入るべきじゃないわね。子供は家に帰って寝ます」