優しい嘘はいらない
何が愛情表現だ⁈
どうみても私の反応を見て楽しんでいるだけでしょう。
ムスッとした口調で
「そんな愛情表現いらないです。佐藤さん、女の子を喜ばせるような優しい嘘つかないでください。かわいいってなにが?私は自分のこと十分わかってるつもりです。性格だってこんなんだし、志乃みたいに可愛くないし、平均並みの顔立ちです…」
佐藤さんは、目を見開き両肩をすぼめ、お手上げだと言わんばかりに五十嵐さんに苦笑いする。
「…確かに平均並みだ。だが、性格は変えられるだろう⁈ひねくれてないで素直に褒められたら喜んでろ…優也も俺もお世辞は言わない」
私の膨れた頬をつねる五十嵐さん。
つねられた頬より、心が痛いと思えた。
あなたの前だと素直になれないんだから仕方ないじゃない。
下を向き沈み込む私。
その時、志乃が口を開いた。
「杏奈はただ、素直に気持ちを表現するのが下手なだけで、つい、思ってることと反対のことを言うのよね」
うふふと笑う志乃が小悪魔に見えてくる。
そんなこと言っちゃたら…
「なるほど…俺のこと嫌いって言ってたが、本当は好きってことなんだな」
ヘェ〜と顎に指を添えて楽し気に私を見る男に殺意が湧いた。