優しい嘘はいらない
「……」
ムキにならない私に拍子抜けした感じの五十嵐さんにふふんと鼻を高く上げ勝ち誇った。
「生意気」
そう言って、高く上げた鼻先をつまんでいく。
痛いなぁ…と睨みながらつままれた鼻先を指先でこすっていた。
「まったく、お前って不器用すぎだろ」
「ほっとけ…それより、ダーツ盤あいたぞ」
「待ってました…志乃行こう」
志乃は口パクで
(がんばれ)
と言い残して2人で隣の部屋に移動して行ってしまう。
そんなこと言ったって、どう頑張っていいのかわからないよ。
「……何拗ねてるんだよ。俺が、またガキって言ったからか?」
「別に…そんなんじゃないし」
「じゃあ、なんだよ?」
じぃーと五十嵐さんを見つめた。
私は、あなたにとって恋愛対象外だからガキ扱いするの?
あなたに女として見てもらうには、私はどうすればいいの?
何が足りないの?
好きって言ったら、1人の女として見てくれる?
心でつぶやいた後
「なんでもない」
プイッと視線を逸らした。
彼が思っていたような反応を示さなかった私に、五十嵐さんはつまらないという表情を浮かべグラスの中の液体を回して遊びだす。