優しい嘘はいらない
何を話すことがあるというの?
今、これ以上一緒にいるととんでもないことを口走ってしまいそうで、私は鞄を握り帰ろう思った。
その前に、志乃に帰ると言わなくっちゃと頭に過ぎり、志乃の姿を探した。
薄暗いダーツの部屋
そこにいるはずの志乃達は見当たらなくて、どこだろうと探してたら、部屋の奥にある暗い通路に入ってしまった。
非常口へ出る通路だったらしく引き返そうとした。
すると、人影が見え立ち止まる。
志乃が曲がり角から顔を出したが、こちらに気づかずに誰かに引き戻されるように見えなくなってしまった。
えっ…志乃?
私は、恐る恐る歩みを進め、そっと曲がり角からのぞいてみると、抱きしめられてる男の首に腕を絡める志乃の後ろ姿だった。
男は、私に気づいたようで視線が合った。だけど、志乃を離す様子はなく、志乃の後頭部を撫でながらキスを深めていく。
ウワッ…
口元に手を当て壁を背にして隠れた。
志乃の顔は見えなかったが、佐藤さんの艶めかしい表情になぜだかドキドキしていた。
このまま、帰るべきだよね。
そっと歩き、元の場所に戻ってくると五十嵐さんは私に気づき、そこにいろと顎で指示してきたが気づかないふりをして出口へ。