優しい嘘はいらない
「どうした?」
「やっぱり…かえ…えっ…………んっ、ぁ……」
繋いでいた手が引き寄せられ、玄関に引き込まれ壁に背を押し当てられていた。
突然のことに戸惑っている間に、彼の唇が私の唇に優しく触れている。
えっ、どうして…
繋いでいた手を握りなおし、絡めてくる指。
その手が頭上付近の壁に縫いつけられると、ドンと反対の彼の手のひらが壁に当たる。
いわゆる壁ドンらしい。
触れているだけのキス
だけど、触れたり離れたりしながら角度を変え何度もくちづけてくる。
うっとりするような甘いキスに、目を閉じれば唇は敏感に感じ彼の熱を感じていた。
あいてる手で彼のスーツの襟を掴み彼の体を引き寄せると、服越しとはいえ密着する自分とは違う体温に体の芯から感じる疼きに気づいてしまった。
唇が離れていくと、空気の冷たさが心地よく感じる一方で、さらなる熱を求めている。
フェイスラインを指先がゆっくりと滑っていき、人差し指が下唇をなぞり顎をぐいっと持ち上げられ視線が合わさった。
「なんて顔してるんだよ」
「……なんでキスしたの?」
「なんでだろうな?ガキのお前にはわからないか?」