優しい嘘はいらない
「わかるわけないじゃん。教えてよ」
唇を尖らせた。
「教えてやってもいい…だが、ベッドの上でだ」
それって私を抱きたいって…そういうことだよね。
「杏奈…決めろ。俺に抱かれるかこのまま帰るか?」
甘く、心地よく響く声は、私の体をおかしくさせる。
背筋を走る甘い刺激にゾクっとして、体の奥底が疼きだし自分の体の変化に驚いて、何も考えられない。
そんな私の耳朶を唇で食み、耳元で囁く。
「杏奈、お前がほしい」
もう、その声にあがらう術を私は知らない。
言葉の代わりに、握っていた襟を離して彼の首に腕を伸ばした。
目の前に襟から出ている彼の首筋
そこに唇をくちづける。
ビクッと反応する彼の体。
「…たく、容赦してやらねぇからな」
背中と膝裏にスッと入った五十嵐さんの腕により、いわゆるお姫様抱っこのように抱き上げられた。
そのまま自分の靴を乱雑に脱ぎ捨て、数メートル先の少し開いたドアを蹴りベッドらしき上に寝かせるようにおろされ、彼は私を跨ぎ腰を下ろしてくると、サイドテーブルの上にスタンドライトをつけ、薄っすらと明るくなった部屋で彼はスーツの上着を乱雑に脱ぎ捨て、ネクタイをシュルッと外していた。