優しい嘘はいらない
それは、優也も同じ考えだったらしい。
好きだと自覚すれば、俺たちの行動力は素早い。
あの日から1週間という猶予が与えられた優也は、計画的だった。
俺たちの行きつけの店で、落ち着きのある店を絞り、薄暗く2人きりの雰囲気を作れる場所で、女にとって特別感を感じる場所を選んだ。
そこが、ダーツバーだった。
もちろん、ダーツ以外にもビリヤード台もあり女を口説くような店じゃない。
酒を呑みながらスポーツを楽しむ場所なら、彼女の警戒心もなくなるだろうと踏んでいた。
実際、予想通りに薄暗いダーツ部屋へ警戒心なく2人きりで行ってしまい、ガラスで仕切られているとはいえ、こちらからは向こうがあまり見えない。
見えるのは照らされたダーツ盤だけ
抱き合っていようが、キスしていようがわからない。
その奥には、誰も通らない非常口へ出る通路もあり、優也の思う壺だった…
さすがに好きな女とそんな場所で行為をおこすような奴じゃないが、彼女が好きだと認めるまで追い詰めるだろう…
俺も負けていられない。
彼女を手に入れられるなら、俺は嘘も平気でついてやる。
部屋に入れてしまえば逃さない。
お前を俺の腕の中で甘やかし、夢中にさせればいいだけだと思っていた。