優しい嘘はいらない
ガバッと起き上がった彼に抱き抱えられ考える暇も与えられずに部屋を出ると、真向かいにあるドアを私に開けさせる。
そこは浴室だった。
浴槽に降ろされるとすぐに温かいシャワーが頭上から降り注いできた。
髪がビッショリと濡れて頬にへばりつく。
「…ちょっと、なに…んっ、ハアッ…ん(するのよ)」
抗議の声は、浴槽の縁に両手をついて私を囲う彼の唇によって塞がれていく。
顔にかかるシャワーと一緒に啄むキスを何度も降らせてきて自然と唇が開いた。
すると、意地悪くキスを止める男。
えっ…やだ…もっとキスしてほしいのに…
私の心を読んだように笑う。
「どうしてほしいんだ?」
唇に触れる距離で囁きながら頬にへばりついた私の髪を耳にかけ、露わになった耳を指先がイタズラにゆっくりと触れ、うなじへと指先がおりていき浮きでている鎖骨を撫でられた。
ゾクっとくる甘い疼きに、体がピクッと跳ねると、彼は苦笑いを浮かべた後、妖しい笑みに変わっていく。
「…‥体は正直なのになぁ…この口は頑固で困る。お湯が溢れるまでどっちが我慢できるか根比べでもするか?」
いつの間かお湯が腰まで溜まっていて、彼は縁に背を預け私を引き寄せた。