サヨナラも言わずに

って、弥生ちゃんならありえるか。



「方法は?」


「特に決まってないよ。でも、あいつを幸せな状態から地獄につき落としたい」



これだけは決まってたんだよね。


実際、私も同じような状態だったわけだし。



「ならさ──」



私は、弥生ちゃんの作戦に乗ることにした。



「じゃ、あとは旭次第ってことで。またね、美琴」


「え、弥生ちゃん、もう帰るの?」



出入り口に向かう弥生ちゃんは足を止め、お母さんと私を交互に見た。



「親子の時間は邪魔できないからね」



……なるほど。


でも今、なんかお母さんと気まずい感じがするんですよ。


なぜか。



「弥生先輩、ありがとうございました」



するとお母さんは立ち上がって、弥生ちゃんに頭を下げた。



お母さん、こんなに母親らしかったっけ……?



そして弥生ちゃんはなにも言わず、ただ手を振って部屋を出ていった。
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