サヨナラも言わずに

「なにか、あったの?」


「あの人、美琴が入院してるってのに、一回もここに来なかったのよ?それに、美琴のこと心配してる素振りも見せなかったし。自分の娘が可愛くないのかしら」



私の、せいだ……


私が、自殺なんてしようとしたから……


だから、お父さんは出ていったんだ……



「美琴。あなたのせいなんかじゃないからね。それだけは、覚えといて」



そう言われても……


話を聞いて、そう思うことなんてできない。



「そんなことより」



そんなことかな。


かなり重要なことだと思うけど。



「明後日には退院できるって。久々の家、楽しみでしょ」



いや、まったく。


正直、帰りたくはない。



自分で散らかしといて言うのもなんだけど。



「大丈夫。ある程度は片付けてるから」


「でも……」


「申し訳ないって気持ちがあるならそれでいいのよ。二人で、片付ければいい」



お母さんって、ホントに優しい。


寛大な心を持ってる。



「じゃ、私はもう帰るね。また明日」
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