サヨナラも言わずに
お母さんは荷物を持って立ち上がった。
「うん。お母さん、無理しないでね」
私はお母さんに笑顔を見せる。
するとお母さんは安心したかのような表情をし、私の頭をなでて帰っていった。
本当に、ごめんね、お母さん。
もう心配かけないようにするからね。
翌朝。
お母さんは嬉しそうに病室に入ってきた。
「おはよ、お母さん。なんかあったの?」
「ううん、なにもない」
ないのかよ。
だったら、なんでそんなに笑顔なのさ。
「もう、美琴と話せることがどれだけ幸せなのか、よくわかったの」
なんか、さらっと言ってるけど……
言われるこっちが恥ずかしい。
「あ、そういえば。あとで弥生先輩が来るって今朝、連絡があったの」
「ホント!?」
やった、弥生ちゃんが来る!
「あー。私が来るよりも嬉しそー」
「いや、違っ……」
「ま、しょうがないけどね。私より弥生先輩のほうが信頼できるし」
慌てて訂正しようとするも、お母さんにあっさりと遮られてしまった。