サヨナラも言わずに
お母さんは持ってきた花を変えていた。
「ねえ、美琴。どうして男性恐怖症だったこと……教えてくれなかったの?」
「それは……こんなこと言えるような空間、私たちの家族の間にはなかったでしょ」
「……うん、そうだったね」
しまった、冷たく言い過ぎた。
「で、でも!今はちゃんとお母さんのこと、信頼してるから……!」
これ、フォローになってる……かな?
「まだ微妙な距離が残ってるねぇ」
「弥生ちゃん!」
声のしたほうを見ると、弥生ちゃんが立ってた。
んー、お母さんには悪いけど、やっぱりまだ弥生ちゃんへの信頼度のほうが高いかも。
「よ、二人とも。美琴、元気そうだね。退院、明日だっけ?」
「はい」
なんでお母さんが答えるの。
いいんだけどさ。
にしても、明日退院かぁ……
眠りすぎたかな。
「じゃ、明後日から復讐開始ってわけか」
「弥生ちゃん、明後日は土曜で学校休みなんだけど」
「あれ?もしかして、今日木曜?」