サヨナラも言わずに
男の人は私を頭のてっぺんから足元まで、じっくりと見つめた。
気持ち悪い……
「ネネちゃん、ホントにいいの?」
すると、一人の男の人がドアの外に向かって言った。
まさか。
「いいよー。あ、写真とかもよろしくね」
ドアの向こうから、楽しそうな声が聞こえてくる。
鼓動がおさまる気配は全く、むしろ速くなる一方。
「んじゃ、遠慮なく」
そんな楽しそうな声とともに、縮こまった私に手が伸びてきた。
「いやぁぁああ!」
私は涙ぐんで、力の限り叫んだ。
そして、そのまま気を失ってしまった。
目を開けて一番最初に目に入ったのは、白い天井。
横を見れば、ベージュ色のカーテンが閉めてある。
ここは……病院……?
でも、病院に行く理由はないはずだし……
「失礼します。六年……」
そのとき、ドアが開く音とそんな声がした。
てことは、保健室?
私はそっと、少しだけカーテンを開ける。
そこには保健室の先生と、一人の男子生徒。
すると、次第に呼吸が速くなっていく。
掴んでいたカーテンに力を入れる。