サヨナラも言わずに

「美琴、先に帰ってて。私、弥生先輩と少し話して帰るから」



ゆったりとお茶を飲みながら言うお母さん。


ちょっとリラックスしすぎな気がするよ?



でも、これは……


あれだよね。


黒瀬と帰れ、的な合図。



「うん、わかった」


「おー、美琴帰るのー?んじゃ、旭。あんた、送っててあげな」



弥生ちゃん、またまたナイスフォロー。


自分からは誘いにくかったから。



「うっせーな。言われなくてもそうするし。つーか、沢田、俺に話しあるんだろ?ちょうどいいじゃん」



黒瀬は立ちながら言った。



つれた。


いや、この場合はかかったって言うべき?



「それじゃ、また来るね、弥生ちゃん」



私は黒瀬の背中を追って、家をあとにした。




「で?なに?」



私の歩幅に合わせてくれてるのか、黒瀬のスピードはゆっくり。



「なに……って?」



ダメだ。


二人っきりになると、さらにうまく話せない。



「話」
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