サヨナラも言わずに
とにかく苦しかった。
手足はしびれるし、頭も痛い。
力を入れて持っていたカーテンからも手を離し、私はベッドから落ちた。
「っ!?」
保健室の先生が、慌てて駆け寄ってきた。
「大丈夫、大丈夫。ゆっくり息を吸って……吐いて……もう一回。吸って……吐いて……」
私は先生に背中をさすられながら、先生の言う通りに深呼吸した。
「大丈夫よ、大丈夫」
先生はずっと優しく、背中をさすってくれた。
「石田くん、こっちに移動してくれる?」
私がとりあえず落ち着いてきたところで、先生は今さっき保健室に来た彼を、別室に誘導した。
石田くんは戸惑いを見せつつも、先生について行った。
ごめんね、石田くん……
そしてありがとう。
私、石田くんのおかげでなんとなくわかった。
私、男の人が怖くなっちゃったんだ。
原因は言うまでもない。
きっとあれ。
「先生……保健室登校ってできますか?」
ベッドに腰掛け、戻ってきて隣に座った先生に、そう聞いた。