サヨナラも言わずに
なんで命令口調なのよ。
ま、いっか。
私がしぶしぶ了承すると、黒瀬はスマホで私たちのツーショットを撮った。
「この写真、送ろっか?」
「ううん、いらない」
だって、残るから。
嫌なの。
黒瀬と付き合ってたっていう、思い出が残るのが。
「つれないヤツだな。てか、さすがに腹減ったわ。なに食う?」
「キノコが入ってない料理」
「……嫌いなのか?」
「悪い?」
あんなの、この世の食べ物じゃないっての。
なんでみんな平気で食べれるのか、不思議でならないし。
「急にツンデレっぽくなったな」
しまった。
つい楽しくて、ペラペラとおしゃべりしすぎた。
なんか、弥生ちゃんと話してるような感じがするんだよ、やっぱ。
「ま、そんなことより。どっか喫茶店にでも行くか」
喫茶店って料理あるの?
飲み物とかがおもにあるような知識しかないんだけど。
「おーい。置いてくぞ」
お前は女子かっていうツッコミをしそこねて、私は若干落ち込み気味で黒瀬の背中を追った。