サヨナラも言わずに

「ほい、到着」


十五分くらい歩いて、黒瀬は足を止めた。



黒瀬は馬鹿だと思う……


てか、絶対馬鹿……


私の歩くスピード考えてくれないんだから。


おかげで息が上がったじゃん……



「うわ、マジ!?」



私が膝小僧に両手をついて息を整えていると、黒瀬の慌てた声が聞こえてきた。



「ゴメン、美琴。今日臨時休業だって」



やった……


これで、こいつとこれ以上一緒にいる必要がなくなるや。



「よし、次探そうぜ」



は?


なんなの、もう……



ホント、馬鹿……



私、これ以上動きたくないのに。



ここは一つ、わがままでも言ってみるか。



「旭……疲れたから、もう歩きたくない……」


「あ、悪ぃ。もう帰るか?」



私は最後の力を振り絞るかのように、小さく頷いた。



「今日は楽しかった。明日、ぜってぇ学校来いよな」
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