サヨナラも言わずに

すると、あたしを元気よく出迎えてくれたのはお母さんじゃなくて、破れたソファに座ってる弥生ちゃん。



思いきったってのは、髪のこと言ってるのかな。


まあ、確かに顔を出すように切ったから……



て、そんなことよりも。



「なんで弥生ちゃんが?」


「いやあー、心配だったんでね。美琴が旭に辛い思いさせられてないか不安で不安で」



付き合ってるってだけで辛いってのは、黙っておこう。



「ま、それは建前で、ホントはあんたが散らかした家の中を見に来たのさ」


「知ってたの?」


「里穂に聞いてたからね。にしても、派手にやったなぁ。そんなにストレスが溜まってたのか?」



なにも言えなかった。



「あたしでよかったらなんでも聞くからな。里穂に言えないことだってあるだろ」



ホント、こういうときだけは頼りになるよ。


やっぱりありがたいね、こういう存在。



「さて。美琴が帰ってきたってことは、旭もそろそろ家に着いてるってことか。あたしも帰ろっと」
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