サヨナラも言わずに
「へぇ……初恋なんだ」
あれ、なんで元気になってんの?
「黒瀬くん、知ってる?初恋は実らないって」
そういえば、そう言われてるっけ。
「だからなに?」
俺には関係ない。
今の沢田に好きとか言うつもりないし。
つまり、自分自身で実らせる気がないんだから。
「うまくいくといいね、目無しなんかと」
こいつ……
「気分が悪い。帰る」
俺は机の横にかけていたカバンを乱暴に取り、教室を出た。
沢田の家、行ってみるか。
住所、変わってねぇといいけど……
「変わってなかったか、やっぱ」
一時間後、ようやく沢田の家に着いた。
久しぶりすぎたせいで、若干迷っていたが、なんとか到着。
「あら、あなた、沢田さん家に用なの?」
インターホンを押すと、後ろから五十くらいのババァに声かけられた。