サヨナラも言わずに
勝手に家に入るわけにもいかず、思いっきりドアを開けて中を見ることはできない。
だから、わずかな隙間から中の様子を見た。
すると、体のそこら中に傷を作り、ボロボロの服を着て座り込んでいる沢田が目に入った。
「沢田……!?」
俺は迷わず家に入った。
「大丈夫か!?」
そして俺はなにも考えず、ただ沢田のことを助けようという一心で沢田に近寄った。
すると、沢田は俺が近付くたびに下がっていく。
「あっ……そうだよな、ごめん」
こいつは男性恐怖症なんだ。
いきなり俺が家に来て、近寄ろうとしたら逃げるに決まってるよな。
「それで……なにがあった?」
俺は今の位置から動かず、一定の距離があるまま、沢田に聞いた。
だけど、沢田は黙ったまま、なにも言おうとしない。
言えないような……ことを……?
よく見ると家の中もめちゃくちゃだし……
「とりあえず、警察に……」
「ダメ……!」