サヨナラも言わずに

勝手に家に入るわけにもいかず、思いっきりドアを開けて中を見ることはできない。


だから、わずかな隙間から中の様子を見た。



すると、体のそこら中に傷を作り、ボロボロの服を着て座り込んでいる沢田が目に入った。



「沢田……!?」



俺は迷わず家に入った。



「大丈夫か!?」



そして俺はなにも考えず、ただ沢田のことを助けようという一心で沢田に近寄った。



すると、沢田は俺が近付くたびに下がっていく。



「あっ……そうだよな、ごめん」



こいつは男性恐怖症なんだ。


いきなり俺が家に来て、近寄ろうとしたら逃げるに決まってるよな。



「それで……なにがあった?」



俺は今の位置から動かず、一定の距離があるまま、沢田に聞いた。



だけど、沢田は黙ったまま、なにも言おうとしない。


言えないような……ことを……?



よく見ると家の中もめちゃくちゃだし……



「とりあえず、警察に……」


「ダメ……!」
< 55 / 160 >

この作品をシェア

pagetop