サヨナラも言わずに
そんなある日。
美琴は大学生くらいの男に、犯されそうになったらしい。
といっても、近寄られた段階で気絶したんだと。
だから、実質、ただ囲まれたってだけ。
んで、それが男性恐怖症の原因。
そっから、一気に男が怖くなった。
なったってわかったころは、男子を見ただけで過呼吸だったらしい。
あたしが見てたころは、教室に行こうともしてなかった。
てか、かなり男子を避けてた。
旭に復讐したいと言う割に、克服しようって気があんまり見られなかったのさ。
三年経ったころには、もう克服を諦めかけてたよ。
女子高に行こうとしてたからね。
でも、それを親に許してもらえなかったーって、泣きついてきて。
今でも覚えてるなぁ、あの顔。
もう、そのころには美琴がホントの娘みたいに思えてきてたからね。
こんな可愛い子のお願い断るなんて、どんなヤツだって、あたしが親ヅラしてさ。
ま、まさか里穂が母親だとは思わなかったわけだけど。
っと、話がそれたね。
それで、あたしは笑顔で頑張れって送り出したのさ。
中学時代はあたしだけを頼りきってた美琴が心配じゃなかった、なんて言ったら嘘になるけど。
それでも、美琴には世界を広げてほしかったから。
心を鬼に……なんて言ったらおかしいけど、そんな気分だった。
そのときの美琴の顔は、不安丸出しだった。
あたし以外の、誰とも関わろうとしてなかったし。
里穂よりも信頼されてた自信があるよ。