サヨナラも言わずに
【旭side】
母さんが話終えると、俺は言葉が出なかった。
まさか、そこまで沢田が追いつめてたとは……
つーか、最後の一言は余計だろ。
「……先輩、ありがとうございました。なんというか……目が覚めました。今まではただの私の自己満足にすぎなかったってことですよね。もっと、美琴に信頼される存在にならないと」
里穂さんはホントに強いと思う。
真実を知っても、まだ頑張らないとという気になれるのだから。
尊敬するよ。
どうしてああしなかったんだろうって、後悔してないところが特に。
過去を反省して、これからに生かしていく。
簡単なことに聞こえるけど、実際に直面するとできないもんだ。
それを、やってのけるんだから、本当にすごい。
「ゴメンな、里穂……あたしも協力するし、なんでも相談してね」
「先輩がいるなら、怖いものなしですね」
二人はそう言って笑いあっている。
どうしてそんなことができるんだよ。
俺にはできない。
「黒瀬くん」
「……はい?」